ひとつは、オントロジー。
計画研究A01『心理療法の多種・大量・精密データ統合に資するオントロジー構築』では、エキスパート型の人工知能技術のアプローチを用いて、心理療法における行為を計算機と人間の双方が理解できる構造化知識として整理し、他の計画研究で生まれるデータを連結できるような語彙の整理や、検索システムの構築を目指します(代表:西村拓一)。
そして、言葉と音。
計画研究A02『自然言語への人工知能技術適用による心理療法支援システムの開発』では、心理療法のなかで話されたり、書かれたりする言葉(自然言語)を用います(代表:竹林由武)。
計画研究A03『音声情報に対する人工知能技術適用による症状識別と治療アウトカム予測』では、心理療法の中で発せられる音声を用います(代表:伊藤正哉)。
このA02とA03の研究では、それぞれ言語や音声データに機械学習等の人工知能技術を適用し、心理療法を受ける人の精神的な状態の識別や、心理療法の治療効果の予測を試みます。
最後に、ネットワーク。
計画研究A04『ネットワーク解析による心理療法の高精細な作用機序の解明』では、数理統計学のネットワーク理論を用いて、精神症状同士の複雑な連鎖パターンを「見える化」します(代表:樫原潤)。
その上で、心理療法の経過のなかで、どのような介入によってどのような症状が、どういったプロセスを経て変化していくかを、精緻に明らかにすることを試みます。
本学術領域では、心理療法の多種・大量・高精細なデータを取り上げ、それらに人工知能技術を適用することで、よりきめ細やかな精神のケア(超高精細精神ケア)の実現を目指します。
人の精神的な状態の識別や治療予測の成果が挙げられれば、他の様々なモーダル(例:表情、身振り、生体データ)に展開すると期待されます。また、精神のケアに限らず、人と人がコミュニケーションをする様々な場面(例:教育、福祉、サービス業)において、本学術領域で開発された技術の適用が期待されます。