A03 音響

“音”に含まれる豊かな情報から超高精細ケアを

ささやき、ため息、嗚咽、叫び、裏声、涙声、絶句、沈黙、かけ声、つぶやき… 
様々な言葉があるように、人が発する声は、こころの機微の細やかなところまでを知らせてくれます。
熟練の心理療法家は“声”や“音”を重要な介入手段として自在にあやつります。
また、相手の声からこころの微妙なゆらぎまでを見事に理解します。
“音”を介した潤沢なコミュニケーションを、デジタルの手段を通して多様な状況で活用する。
これが実現できたら、人はもっと人のことを理解し支え合えるのではないか。
そんな想いで本研究に取り組んでいきます。
研究代表者
伊藤正哉 博士
(国立精神神経・医療研究センター
認知行動療法センター研究開発部長)
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研究の内容

“音”は、昆虫の羽音、鳥のさえずり、海洋や地上の哺乳類の複雑な鳴き声など、様々な生物種において情報伝達手段として用いられています。集団生活によって生存と繁栄を築いてきた人類にとっても“音”は重要な情報コミュニケーション手段です。そして、心理療法という“こころに関する人と人のコミュニケーション”という極めて抽象性が高く、人間的な営みにおいても “音”は不可欠な媒体です。

計算機性能、センサ技術、データ通信技術などの発展に裏付けられた人工知能技術は日進月歩の勢いで進化しており、大量の“音”データを扱う加工・解析技術が開発されています。例えば、人工知能技術の活用により工場や建築物(高架道路やトンネル等)の異音検知、家畜の鳴き声による伝染病の早期発見など、人工知能技術を基盤としたサービスが次々に提案・展開されています。ヒューマンコミュニケーション領域では、コールセンターサービスにおける通話者の感情識別が実用化されています。

このような音響情報処理技術の進化を踏まえ、私たちは“音”そのものを心理療法の研究対象とできないか、と考えるに至りました。本計画研究では、これまでの臨床試験で実施されてきた心理療法の実際の録音データを利活用させていただきます。そして人工知能技術を用いて“音”についての特徴量を抽出し、人の精神状態や心理療法の効果を予測することを試みます。

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